幻冬舎版/よみがえる大野・日本語タミル語接触言語説の展開 (含・正誤表)

幻冬舎版/よみがえる大野・日本語タミル語接触言語説の正誤表

垂乳根(たらちね)の母

万葉集4348歌に「多良知禰乃(たらちねの) 母を別れて まことわれ 旅の仮廬(かりほ)に安く寝むかも」などと歌われる「たらちね」であるが,通説は「垂れた乳の」「満ち足りた乳の」の意味とする. しかしながら,幾ら古代だからとはいえ,息子が自分の母を「垂れた乳の」「満ち足りた乳の」などというであろうか.しかも父(ちち)にも掛かるのである.もっとも,父に掛かる場合,タミル語cuci[胸(breast…

大野反論に耳目をふさいだ言語学者 最終回

この反論はしかし,山下博司博士には通用しなかったようである.山下氏はいう. (大野)氏の議論は少なくともタミル語に関する限り,数多の問題に満ち,時に学問的な公正さ・客観性を疑わせるような記述の方法がとられている.単語の本質的な語義を析出する代わりに,日本語の知識からする先入観や思い入れをもってタミルの対応語を選別し,その単語から一部の語義のみを抽出・強調する.枝葉末節的と見なされ得る語義であるに…

大野博士の反論② その十三

◆辞典 にはない 「意味」 の実際 「大野教授は厳密な意味の対応を問題にされているが,引用した辞典にはない 意味が用いられているケースが結構ある.そのいくつかをあげておく」とある.「ここにあげた例だけではなく,細かくみると,もっと多くなり,あくまでも筆者がざっと目をとおして気がついた例だけをあげた」ともある. 対応語が真実に対応といいうるものかどうかは最も核心にふれる問題である.だから疑わしいも…

大野博士の反論 その十一

大野論攷において,大野氏は次のように述べる.ただし,下記論攷は大野氏が,比較言語学でいう同系論を採っておられたときのものである.その後,クレオール言語学の軌道に入り,新・大野説を唱えられるに至った.とはいえ,大野氏が当時系統論を採られていたにせよ,音韻,語彙対応は瞠目(どうもく)すべきところがあった. この大野論攷を大野説排斥論者は実際,徹底無視したように見受けられる.以下,長文だが,上掲大野論…

言語学界の長老・・・松本克己氏の大野説批判 その十

松本(まつもと)克己(かつみ)氏の大野説批判 言語学界の長老,元・日本言語学界の会長でもあられた松本(まつもと)克己(かつみ)氏は, 日本語タミル語起源説を"理論的”に批判している学者としても知られる碩学である.確かに,一見理論的である.同氏は日本語縄文語説を唱えておられる. 即ち,松本氏は「日本語は(中略)決して外部からもたらされたものではなく,縄文時代以来,この列島内で行われた数多くの言語の…